extra II
REVIEW


S C U M (2003)

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■ 「その悪魂、ノイズ・ギターに憑依す。」

スカムだ。 この御時世にまったくもってスカムだ。

もう結成して 10年以上になるのに、 その音塊は ますます エスカレート していき、

ライブにおいても 全くの衰えを覚えない。 鬼迫。 悪魂の咆哮。 激流。 凄まじい音像だ。

フォークソング、青春パンク、ラブバラードが 街に溢れる世の中、自己中心的御無礼で、

まるで 暖かみの感じられない バクテリア・サウンド。俺はこいつを渋谷の ど真ん中、

街宣バスから爆音で聴かせたい。

―――【 from press release / NARASAKI ( COALTAR OF THE DEEPERS ) 】

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■ 1987年から活動を継続するバクテリア。80'sニューウェイブの血を受け継ぎつつ、

ノイズ、テクノを 飲み込んだヘヴィ・ジャンクで ゴシック・ハードコアな 世界観は、

非常に ユニークで 嬉しい存在だ。殺傷力に満ちた音塊が 渾然一体となったカオス・

グルーヴを展開し、ダンス衝動と脳細胞を死滅させる快感が同時に楽しめる作品。

―――【 from headline of interview / INDIES ISSUE VOL.9. JUNE/JULY.2003. 】

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■ 打ち込みを使用したラウド・サウンドを 早くから確立していた彼らが、9年振りの

アルバムを森川誠一郎の主宰する Grand Fish/Lab からリリース。 クレイジーな爆音

が響く中で、メロディには人懐っこい味があるのがユニーク。

―――【 PIA NO.1006. JUNE.16.2003. 】

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■ あぁ、 そう、 こういう音楽は、でっかいスピーカーからの大音量で聴いたら、 物凄く

気持ちが良いんですよ。 確実に。 で、 可能ならば、ライブに行って 生演奏で聴くのが

一番気持ち良い。絶対に。ヘッドホン とか イヤホンで聴くのは 薦めません。 本当に。

耳だけで感じてても しょうがない。シャツやパンツを大音量で震わせないと。大音量に

身を委ねて ぐちゃぐちゃびちゃびちゃ 汗だくにならないと。

日本の大半の方々は、 お手軽でお気楽でつまらない音楽を、お手軽でお気楽でつまら

ない聴き方 をしていて、本当にもったいない。そんな聴き方をするなら、むしろ聴くな!

・・・とか何とか今、ヘッドホンでこの「SCUM」聴きながら悶々としております。いや、

僕も普段、 お手軽でお気楽で つまらない音楽を、 お手軽でお気楽な聴き方 しているん

ですが(つまらない聴き方はしていない)。

だってあまりに格好良すぎて。

―――【 ROOFTOP (LOFT FREEPAPER) AUG.2003. 】

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■ なんと9年振りの フルアルバム。最高傑作。臨場感あふれる「打ち込み系ラウド・

ロック」のベスト日本人アーティスト。聴いたら最後、病みつきになるトランス具合。

ラウド、ポスト・ロック、デジタル・ハードコア、トランス、モグワイ好きはみんな

やられるぞ。

―――【 TOWER RECORDS Ikebukuro. JUNE.2003. 】

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■ Z.O.A の森川が 主宰する レーベルから出た9年振りの3rd。80年半ばから活動し、

打ち込み系ラウドからテクノ・トランシーなアプローチまで先駆的に 展開してきた。

SCUMとは 80年代末に 囁かれた 最末端 アンダーグラウンドを指す タームでもあり、

それを確信犯的に作品名に冠したことからもうかがえるように、ハードコア/ヘヴィ・

ロック / エレクトロ / グラムなどなど 多彩な要素がノイズ・カオスと化している。

だがそれらを貫く極太のドライヴ感が気持ちいい。

―――【 FOOL'S MATE No.262. AUG.2003. 】

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■ カワグチを 中心とする ユニット、 バクテリア、 9年ぶりのフルアルバムが リリース

された。実質活動停止となった95年以来、マイペースながら録音作業やライブを続けて

きたが、その集大成的作品だ。その打ち込み+サンプラー*生演奏といったスタイルに、

ハードな音楽的要素のフラグメントがとびかっているのだが、その渾然一体となる音圧

のようなグルーヴ感が、なんともかんとも、喧しくも凄まじい!

―――【 FLYER (QUATTRO FREEPAPER) No.85. AUG.2003. 】

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■ 耳に突き刺さるささくれ立ったノイズ。憎々しげに吐きだされるその音に、一瞬息を

のむ・・・。とにかく音の歪み方がハンパじゃない。スワンズやゴッドフレッシュ などを

彷彿させる重苦しさ。おそらく、この音で聴き手をかなり限定してしまうだろう。それ

は致し方がない。 が、 その関門をくぐり抜けた者を、 今度はキャッチーなリフと始終

攻めたてるリズムが出迎えてくれる。このリズムとリフの応酬に乗れさえすれば、きっと

今作の虜となること違いなし。その意味では、マッドカプセル・マーケッツやアタリ・

ティーンエイジ・ライオットなどと関連づけて聴くことも不可能ではないだろう。そして、

由緒正しい(?)ノイズ系、 激重インダストリアル系の血を 受け継ぎつつも、 やはり

フロアでの経験が物を言うのだろうか、快感のツボを押さえてもいる。そんなユニーク

さがこのバンドのオリジナリティーである。

ただし、この作品から感じ取れるのは、決して爽快さでも前向きな闘争本能でもなく、

どこまでもネガティヴで不健康な精神状態である。あくまでもネガティヴ一直線。いくら

聴き手のグルーヴ感を刺激しようとも、どこかどんよりした殺意が潜んでいる。このゾッ

とする感覚、個人的には大歓迎だったりする。と書くと性格疑われるかな?でも肥大化

した悪意そのものには共感できないとしても、それをなんの躊躇もなく押しだしてしま

う良い意味での良識のなさ、とても魅力的に見える。

ノイズとはそもそも人間にとって不快な音であったはずで、しかしそれをあえて全面に

出すことで別の快感を生み出そうとしたのものである。彼等はそんな「負」の音に、ある

種の分かりやすさををまぶして、より噛み応えのある音楽を創り上げた。そこに彼等の

経験値の高さ、フロアで培った現場感覚の鋭さが表れていると思う。

こんなにも過激なこの作品は、是非とも大音量で聴くべきだ。そして、この轟音の飛礫を

一身に受けるべきだ。むろん、ライブに出向いて生で体感するのがベストであること言う

までもないが。

―――【 OVERGROUND VOL.8. NOV.2003. 】1

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■ これは悪意なのか。ギター、ベース、ドラムス、サックス、声から一斉放射される激しい

ノイズが空間を覆い尽くす。極悪な条件で録られた海賊盤のように割れ歪んだ音。公害

汚染された大気越しにプログレ曲の進行を眺めるような、酸性雨越しにインダストリア

ル音の動止を眺めるような、 そんな感覚に陥る。 ノイズの向こう側で 演奏されている

音楽は曲の体を成していてヴァラエティに富んでいながら、いかんせん有刺鉄線の如く

張り巡らされたノイズに遮られ、そこへ気軽に近づくことができない。

この音はなぜこうなのか。商品化され量産されて短期間で消費されていく商業音楽への

アンチ表明なのか。それをノイズで批判しつつ価値観の破壊を図っているのだろうか。

それとも心がむず痒くて仕方ない人がノイズで心をがりがり掻くための、ある種の癒し

の音楽なのだろうか。あるいは 世の偽善を喝破して 現実の姿を提示した 猛絶なる告発

サウンドなのか。はたまた彼らにとってノイズはただ、感情が暴れられる領域を無制限

に拡大するための 表現欲のブースターなのだろうか。 そうやって 音の鳴りを制御して

しまう要素の いっさいを 排除して、 完全な ナチュラルな 空間を 現出させているのか。

おそらく正解は教えてもらえない。正解もどうせノイズにかき消されて聞こえない。

そういうこの音に、僕は なんらかの 思い入れを 抱いたり 共鳴したりはできなかった。

苛烈な音に免疫はあるつもりだが、同時に、美しくバランスが取れたメロディアスな音楽

も嫌いじゃないから。バクテリアの鳴りに同意し切れないのかもしれない。それだけ彼ら

の表現は痛いところを半端なく突いてくる気がする。気に入るかどうかはともかく、一度

会ったら忘れられない存在だ。その正体はライブで大音量で浴びないと分からないのか

もしれない。ライブでの鳴りは凄まじい快感を呼ぶドラッグなのかもしれない。ただの

悪意なのかもしれないけど。

―――【 OVERGROUND VOL.8. NOV.2003. 】2

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■ 三十代を越えたあたりになって、朝4時まで呑んだ次の日になると、 あまりに 体が

ダルダルであることに対し「こういう呑み方は、もう出来ん。もう若くない。卒業だ!

卒業!」と体の衰えを非常に痛感する人も多いのではないだろうか。

ロックもそれと同じように「こんなの聴くのも、卒業だな〜」と一般の人々は、若い頃

聴いていた音楽をいつしか止めていく事が多い。

町田康『へらへらぼっちゃん』の一節でも「ロックというのは、ある音楽の形式を意味

する言葉でなく、三十歳以下の人達による、音楽を通じての、社会的・精神的の運動、

もしくは風俗の形を意味する言葉であり、人々は空疎なロマンを語るのではなくして、

ある等身大の自己をロック音楽によって表現し、おもに十代の人たちが、そこに自身を

重ね合わせて、ロック音楽を熱狂的に支持してきた、という経緯がある」とある。

つまりロックというのは音楽でなくて“生き方”(それも三十歳以下限定)という捉え

方がなんとなく根付いてしまい、 三十歳を越えて 「オレ、ロック聴いているぜ」 と言った

日にゃ罵倒や軽蔑の対象となってしまうから一般の人々は聴くことを止めていくのだろ

う(?)。さて、「オレもいい年だし、ロックは卒業かな〜」と諦めモードになったら、

本作のような激重音楽を聴いて「卒業か否か?」を決定すればいい。

シンバル・バスドラが雷撃の如く打ち続けられ、ギター・ベースがカオティックに鳴り

続ける・・・。ボアダムスの『スーパールーツ5』のようなノイジーな音世界とスレイヤー

『レイン・イン・ブラッド』の攻撃性が 融合した 過激な音楽。 誰もが心の内側に持つ

“暴虐的衝動心” を本当に煽る。 理屈はいらない。 ただ単に殺傷力とスピード満点の

サウンドが気持ち良い。 やっぱロックは、 ヤバイ音でないとダメなんだ と再確認して

しまいます。 呑んで疲れ切った朝、この音楽を聴いて「さぁ、もう一件!」と言える

人は本当に素晴らしいと思う。

―――【 OVERGROUND VOL.8. NOV.2003. 】3

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■ The extreme music scene in Japan has always been known for being some-

what strange. Bacteria, perhaps best known for supporting Der Eisenrost

during tours, delivers a set of tracks that fit right in with that stereo-

type; Scum is 16tracks of power-guitar playing with a disdain for chords or

riffs, pounding percussion, occasional blasts from trumpets and saxophones,

and miscellaneos, intensionally misplaced samples. this is one big slice of

sonic chaos. most EBM fans won't find the sound to their liking. The usual

industrial/EBM tropes (the drum machines, the predictable, danceable beats)

are missing entirely. Bacteria really is more of odd combination of guitar-

-noise band and jazz jam band. those readers who remember Zeni-Geva will

more than likely appreciate this slab of sonic excess, but others who don't

remember that first wave of japanese invasion may not.

―――【 INDUSTRIALNATION MAGAZINE #20. JULY.2004 】

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■ 2003 cd release from a band that has been a prolific presence on the Japanese

underground scene since around since 1987 or so. They have a fair amount of

releases, but most seem to have been on cassette (if my kind readers have

mp3s of any of these I would love to get a hold of them). Their aesthetic is bleak

and monochrome, with imagery sticking to tried and true dark forest/dead children/

factory/graveyard stuff which certainly dovetails well enough with their sound.

―――【 Eater Of Sounds. (WEB) JUNE.2009 】